昨日、「景気の悪化と経営者に必要な法務」という講義をした。
産業経理協会の「経営財務法務研究会」においてである。
上場企業の役員を対象にしたこの研究会を始めて9年目に入る。
当初の参加者は46名だったが、今では、170名になっている。
この研究会は、原則毎月開催で、年間11回開催する。
そのうち、6回は私が講義し、5回はゲスト講師が講義する。
昨日は、私が講義する番だった。
今回は時事的問題との関連で、経営者及び法務の観点で講義を構成した。
最近の経営で最も大きなテーマが金融危機による景気の動向である。
これ対し、経営者はどういう態度をとるべきかを中心に講義を展開した。
同時に、景気の悪化によって法務面でいろいろな問題が出てくる。
それに関して経営者は、どういう点を注意すべきかについて話をした。
サブプライム問題に端を発して、現在、金融危機に見舞われている。
その影響は自動車の大幅な売上の減少を典型例に、実体経済に及んでいる。
昨日・一昨日と株価は少しは回復したが、それ以前に株価は暴落した。
金融危機は去っていないし、実体経済の悪化はこれから本格化するだろう。
そうだとすれば、今後の景気は悪化することは間違いないと思われる。
不景気の程度・その期間は不明であるし、論者によっては恐慌になるという。
その意味では、景気の悪化の程度・期間は不透明なままである。
その意味では、企業の将来がどうなるかについて、関係者は不安であろう。
不況の程度も軽くはなく、恐慌の恐れを否定できない状況にあるのだから、
企業関係者の不安の程度は大きいと想像できる。
不安を取り除き、企業の存続と成長を確実にするのが経営者の役割である。
では、将来の見通しが立たない場合に経営者はどういう態度をとるべきか。
荒波の中で安全な航海をするには、船長である経営者が、羅針盤を用いて、
安全に荒波を乗り越えられる、という自信を持った態度でいることが重要だ。
つまり、荒波を乗り越えるかどうかは、経営者の態度次第でなのである。
そのためには、経営者に迷いがあってはならない。
迷いを断って、安全な航海をするための明確な方針を立てる必要がある。
現状は恐慌になるかどうかは不明であるが、その可能性も否定できない。
かかる場合に安全を期するには、最悪を覚悟し、最悪に備える必要がある。
つまり、経営者は恐慌を視野に入れて、最悪の状態を想定するのが望ましい。
このように最悪を想定し、それに対応する覚悟を決めれば、迷いはなくなる。
つまり、このような状況では、経営者は覚悟を決める必要がある。
覚悟があれば、経営者は不透明な状態に捉われず、心の自由を確保できる。
最悪を受け入れそれを乗り越える目標があれば様々な方法を工夫できるから。
二宮尊徳は、覚悟がものごとを成就させる秘訣だ、教えている。
その要旨は、つぎのようなものである。
「覚悟、これが事をなす大本である。
この覚悟があれば、衰退した村を再興するのも、
落ちぶれた武士の家を再建するのも、非常に簡単である。
ただ、事をなすには、覚悟があるかどうかにかかっている。」
不況の克服に関して、有益な著作がある。
松下幸之助著「不況克服の心得10か条」(PHP研究所)である。
巻物風になっているもので、丁度、贈呈されたのがあった。
そこで、講義用のレジメで、この10か条を紹介し、私なりの解説を加えた。
覚悟を決めると、不況あるいは恐慌のチャンス面が見えてくる。
そういうときこそ、改善や発展のチャンスがあることに気づく。
経営者・経営幹部・従業員が人材に成長するチャンスでもあることがわかる。
このような観点から、現に長期間成長の実績を残している企業もある。
その典型例が、ジョンソン&ジョンソンである。
同社は、1929年以降の恐慌を教訓にそれに備える経営をしている。
すなわち、恐慌の時でも成長する企業を目指してそれを実現している。
その羅針盤となるのが、同社の経営理念「我が信条」である。
この点に詳細は、私の著書「豊潤なる企業」(清文社)を参照されたい。
さらに、この講義では、景気悪化の際の経営上の法務リスクに触れた。
業績の低迷から生じる法的リスクと株価下落による法的リスクを述べた。
役員の責任問題、インサイダー取引等の法令違反等を想定する必要がある。
さらに、株価下落による買収のチャンスとそのリスクの問題にも触れた。
最後に、不況・恐慌を克服するのは経営者次第であり、そのための仕組みが
経営者を中心におく内部統制であることを説明し、講義を締めくくったのである。
内部統制によるリスクの認識は、チャンスの認識を伴うものである。
内部統制の法律規律を正しく理解することは、企業の成長に有益なのである。
本セミナーのレジメを、当事務所のホームページの「掲載原稿」のところに
後ほど、掲載することにする。
何かの参考になれば、幸いである。
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